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トイレのらくがき

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君がいた夏は遠い夢の中 空に消えてった打ち上げ花火

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「あなたには忘れられない歌がありますか?」 

私には両親がいない。
父は私が3歳の時、交通事故で亡くなった。
父の記憶はない。

私は三姉妹の真ん中で、幼子を3人も抱えた母の子育てはさぞかし大変だっただろうと思う。
母は働きながら、食事やお弁当を作り、家事一切を完璧にこなしていた。
参観日には必ず3人の授業を15分ずつ見に来てくれた。
父親参観の時がイヤでプリントを破り捨て、どんな隠蔽をしようとも母はなぜか必ず来るのである。
運動会はさらに恐怖だ。
父親と走らねばならないかけっこで母が一緒に走る。
当然毎回ビリなわけで。

私は自分の境遇を不幸だと思っていたし、必死な母を恥ずかしいと思っていた。
そんな家庭にうんざりで、中学生の頃から悪い友達と遊ぶようになった。
ほとんど家へは帰らない日々が続いた。
母が汗水たらして稼いだお金を財布から抜き取っては 勉強もせず、遊び呆けていた。

でも、母は一度も怒らなかった。
何度、学校から呼び出されても母は怒らなかった。
私が学校をさぼって補導され迎えにきた時も母は怒らなかった。
ただ真っ直ぐ私を見てこう言った。

「お父さんが死んだ時、あんたはちっちゃい手で母さんの手を握り締めてな
『今日から私がお母さんを守るけんな』って言うてくれたんよ。」

もちろんそんな言葉は憶えていない。
だが、私はその手を汚してしまったのだ。

少しだけ母の頬に光るモノが見えた。
母が泣いたのを見たのはその時が初めてだった。
 
この日から悪い友達と遊ぶのをやめた。

私が高校1年生の時、母は癌になった。
この時、私には夢があったのだが、あきらめるしかなかった。
母を置いて実家を出ることはどうしても出来なかったからだ。
自分で決めたはずなのに、いつしか母を恨むようになっていた。
大学に行けないのも母のせい。
夢をあきらめたのも母のせい。

社会人になった私は地元の会社に就職した。
母の医療費を稼がなければいけなくなったからだ。
自宅療養している母の看病と仕事に明け暮れる日々が何年か続いた。
やっと仕事にも慣れた頃、母は二度目の手術を受ける。
癌の再発。
この時、私は母の入院先の医師から残酷な宣告を受ける。

「余命半年」

母が飲んでいる痛み止めは麻薬のようなモノで、
そんな薬で誤魔化さなければならない位、母の体は癌で蝕まれていた。

母の希望で小さな医院へ 転院することになった。
自宅から2時間も離れた入院先から仕事場へと往復する生活が続く。

私が行くと、母は決まってこう言った。
「お歌、うたって。」

母は私の歌がとても好きだった。
私は母が眠るまで歌を唄い続けた。

母が大好きだった曲。
「夏祭り」

季節は過ぎ、母の癌は全身に転移する。
もう目はあまり見えなくなっていた。

私が行くと、やっぱり決まってこう言った。
「お歌、うたって。」

母の病状は日に日に悪化し、もう私の姿は見えていないようだった。
だけど、あの言葉だけは絶対に言うのだ。

「お歌、うたって。」

私は母が眠りにつくまで唄い続けた。

余命半年と宣告された母は4年後、ついに運命の日を迎える。
仕事場へ母が危篤との知らせを受けたのは、寒い寒い12月のことだった。
慌てて車を走らせ母のもとへ。
親戚が容態が落ち着いたので自宅で待機しろと言われる。
それは家に帰って色々な準備をしろという意味でもあった。

私はこの時、覚悟を決めた。
母はもう死ぬのだと。

部屋の片付けをしていると、電話が鳴った。
~5時25分、お母さんが亡くなりました~
まるで機械のような冷たい声で。

50歳という若さでこの世を去った母。
とてもとても優しい人でした。

私は母の死に目に合うことができなかった。

姉と車で母を迎えに行った。
二人ともずっと黙ったまま。

病院に着くと、母の妹が涙を浮かべながら言った。

「ずっとな、あんたの歌が聴きたいって言うてたんよ。」

小さくなった母の体を抱きかかえて車に乗り込んだ。
その母の体の軽さに愕然とした。

私は泣かなかった…。

姉は一言も喋らず、ハンドルを持つその手だけが震えていた。
私は後部座席で小さく冷たくなった母の体を抱きしめて家に着くまで唄った。
声が枯れるまで唄った。

季節外れの夏祭り・・・もう母には届かない。

ステージに立つとき、いつも母のことを思います。
この声はあなたに届いているのだろうか…。

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無題

なっちゃんの心の中でいつまでも生き続けているお母さんはすごく幸せだと思います。
悪い事をしても怒らなかったのは自分で気付くことが大事なんだとお母さんは伝えたかったし、なっちゃんはきっと気付いてくれるって信じていたんだと思います。
って偉そうなこと言っちゃって自分(^-^;。。。

なっちゃんの歌はお母さんに届いてますよ。
優しく囁く様な歌も、叫び訴えるような歌も全てなっちゃんから生まれてどこまでも響いてるとうちは思います。
by あすか 2011/08/14(Sun)01:55:49 編集

あすか様

や!こんな長文読んでくれてありがとう。
そして、心に沁みる素敵なコメントありがとね。
嬉しかったです、とても。

母親には苦労ばかりかけて親孝行できなかったので
今でもそれが心残りですね。
でも、人間の記憶なんていい加減なもんで、だんだん薄れてっちゃうんだよね。
絶対忘れたくないって思ってることも。
母の顔も声も。
あんなに悲しかった日のことも。
だから忘れない為に書いておきます。
私の記憶がぼんやりする前に、せめて文章に残しておこうってネ。
お盆だしネ。

本当にありがとう。
心があったかくなりました。
後悔だらけだったけど、あすかちゃんのおかげで救われた気がします。
2011/08/14 02:14

無題

素敵なお母さんだったんですね。

思わず泣いてしまいました。

私は何の取り柄もなく何の才能もなく生きてきました。

そして、家族のため…って言いながら働き、好きなことが出来ず一時期は家族を憎むこともありました。

そんな私ですが、両親は歌だけは褒めてくれるんです。

私の中で、
【親孝行は生きてる内に、そして元気な内にしたい。】

語弊を招いたり不快な思いをされたらすいません。

職業病なこともあるんですが、いつも思ってます。

子どもに、したいことをさせてやれないって…

親にしたらものすごくツラいことだと思います。

私はやっと自分のしたいことが…音楽が出来るようになりつつあります。

いつか両親に、へそっこのステージで歌う姿を見てほしい!!

それが私が出来る親孝行の1つだと思ってます。
by ORANGE。 2011/08/14(Sun)03:36:19 編集

ORANGE。様

コメントありがとうございます^^
素晴らしい母親だったと思います。
今でも尊敬しています。
泣かせてしまって申し訳ないですm(_ _)m

今になって思うんですけど、親は子供が元気で生きてるってだけでいいんじゃないかなって気がします。
自分は幼少期から喘息で入退院繰り返してた上に、素行も悪かったので最悪な子供でしたね。

ORANGE。さんは十分親孝行ですよー!
まぁ、おまえが言うなって感じですけどwスミマセン。
でも元気でいることが一番だと思います。
いつかステージに立ってるORANGE。さんを見せてあげてください。
きっとご両親様、喜ばれるでしょうね。
2011/08/15 13:29

無題

遅ればせながら

とても悲しい話だけど、人間っていろんなことがあります その中でこそ成長もするのでしょうね
うちも3姉妹ですが、子供たちのことを考えると頑張らないといけないなといつも思います
というか、思わせてくれます
うちの奥さんも高校生の時にお母さんを病気でなくしていますが、彼女の中にはまだお母さんはいます
僕は会ったこともないけれど、きっとこういう人だったのだなと分かります

僕には両親がいますが、仕事もあってなぜかあまり仲良くないのです 素直になれないのです

夏祭りはとってもとっても良い曲ですね
ステージで歌ってください
by こはる 2011/08/19(Fri)11:45:32 編集

こはる様

( ゚ー゚)( 。_。)ウンウン。
生きてるといろんなことがありますね。
大人になって私も生きる意味について色々考えてたりします。
もっと成長できればいいな。

三姉妹っていいですよね。
こはるさんがパパだなんてうらやましい。
そうでしたね、こはるさんの奥様も早くに母上を亡くされたお話、
以前も聞かせてもらってなんていうか、同じ痛みを知ってるなーって勝手に親近感持っちゃいました。

私も親が生きてるうちは仲良くなかったですよ。
反抗的な子供でした!
全く親孝行してないんで。
でも私はこはるさんっていい息子さんだと思うんだなあ。
実家を継ぐのは素晴らしいことだと思うのです。
ただそばにいることがどんなにむずかしいことか今ならわかるから。

夏祭りはあの日以来唄っていません。
というか、唄えなくなりました。
いつか唄えたらいいなと思うのですけど。
2011/08/19 19:28
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